*この連載は、「クラウドバックアップとは?」をテーマにバックアップやクラウドの基本から使い方までを分かりやすい内容でお届けしています*


ここでは、バックアップファイルの保存先について考えてみたいと思います。


外部記憶装置は定番、しかし…

以前は、光学メディアなどもバックアップ先として使われていました。最近では、保存するデータ量の増大、書き込み速度の問題などから、使われる機会が減ってきています。
やはり、一般的な保存先として検討されるのは、外部の記憶装置です。接続方式によって違いがありますが、移動性に優れたUSB接続のHDD、ネットワーク上に配置されたNASなどがあります。HDDの容量も最近では大容量化が進み、TBクラスのHDDを実装することも一般的になっています。バックアップファイルの保存先としては、まず、候補となるものでしょう。それ以外では、LAN内に配置されたサーバーの共有フォルダなども候補になります。


外部記憶装置のイメージ


しかし、ここで1つ考えなければいけないことがあります。「バックアップファイルは、バックアップ元と同じ場所に保存しない」です。めったに発生することではありませんが、巨大災害などでは、建物ごと被害に遭う可能性があります。もし、バックアップ用の外部記憶装置をPCの傍に設置していると、PCだけでなく、バックアップファイルも同時に喪失してしまいます。これでは、バックアップとして、意味がありません。
そのような理由から、バックアップファイルは、バックアップ元とは距離のある場所に保存することが望ましいといわれる理由です。


具体的には、本社と距離的に離れた支社で互いにバックアップファイルを保存するといった方法が考えられます。阪神大震災では、大阪の本社のサーバーを東京支社でバックアップ保存していました。大阪での業務に支障が発生したので、すみやかに東京のサーバーに移行し、業務を継続することができたという事例もありました。まさに、バックアップを遠隔地に保存することで、対応できたよい事例かと思います。
しかし、会社の規模によっては、単一の社屋しか存在せず、そういった取り組みが不可能なことも少なくありません。

クラウドでバックアップファイルを保存

そこで、今、注目されているのが、クラウドで展開されるサービスを利用することです。そのまえにクラウドについて、改めて考えてみたいと思います。クラウドとは、いったい何を指すのでしょうか。一般的には、インターネットを介して提供されるサービスの全般を意味します。少し具体的な事例を紹介しましょう。

  • 仮想サーバーやHDDなどのハードウェアリソースを提供するサービスなど。かつては、実機で提供されたレンタルサーバーなどが、仮想化され、クラウドサービスとして提供されます。一般的に、IaaSと呼ばれます。
  • 上述の仮想サーバーは、ハードウェアのみの提供です。それに、OSやネットワーク、アプリなどを付加したサービスもあります。主に開発環境の提供が行われます。従来は、自前でサーバーを用意して、必要な開発環境をインストールする必要がありました。クラウドサービスでは、それがすべて用意されており、速やかに開発に着手できます。このサービスをPaaSといいます。
  • そして、アプリケーションレベルでサービスを提供するのが、SaaSと呼ばれるクラウドサービスです。具体的な事例のほうがわかりやすいと思います。たとえば、Googleが提供するWebメールサービスのGmail、クラウド上で処理を行う会計ソフト、ストレージサービスのDropboxなどが該当します。



この3つの関係を図示すると、図1のようになります。


図1:クラウドで提供される3つのサービス
図1:クラウドで提供される3つのサービス



単純に比較すれば、もっともハードウェア寄りがIaaSで、ユーザーが利用するアプリに近いのがSaaSになります。バックアップファイルの保存先には、IaaSで提供されるストレージサービスなどが該当します。実際の利用にあたっては、このようなことを意識することはあまり多くはないと思います。そして、重要なのは「インターネットを介して受けるサービス」である点です。


次に、クラウドサービスの長所や欠点について考えてみたいと思います。まず、長所ですが、従来は社内サーバーなどで共有データの管理を行っていました。それをクラウドに移行することで、どんな端末からも自由にアクセス可能になります。また、社内サーバーではないので、定期的な保守、脆弱性対策などをクラウドの管理者が行ってくれます。社内サーバーを持たず、社内に保守や管理者が不在でも利用可能な点は大きなメリットになります。
実際に、クラウドサービスでデータを保存するのは、データセンターになります。

  • 耐震・耐火設備を持つ(地震の発生率が低い場所に設立されることも)
  • 自前の消火設備を持つところも
  • 自家発電設備を持つところも
  • 場所が非公開なことが少なくない(実際のテロなどの攻撃を防ぐ)



と、非常に堅牢な構成になっています。社内サーバーを所有しないですむメリットもありますが、停電・自然災害によるデータ破損などは、ほぼ皆無といってもよいでしょう。
しかし、クラウドサービスの利用は、IDとパスワードによります。端末や利用者のアカウント管理があまいと、セキュリティリスクは非常に高まります。また、著名なクラウドサービスを展開するベンダーは、サイバー攻撃の対象となりやすい傾向もあります。実際に、著名なポータルサイトでは、大量のアカウント情報が詐取された事例もあります。さらに、巨大なベンダーといえども、営利活動を行う企業である点です。なんらかの理由により、業務の遂行ができなくなるという可能性も100%否定することはできません。


とはいえ、人的にも、物理的にも制限の多い中小企業などでは、完全なバックアップ体制を自前で構築することは非常に難しくなっています。クラウドサービスを利用することで、これまではできなかったバックアップ体制を構築できる可能性があります。そして、前段でふれたように、会社から離れた場所にバックアップファイルを保存するという目的にも十分かなうものといえるでしょう。


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