*この連載は、「クラウドバックアップとは?」をテーマにバックアップやクラウドの基本から使い方までを分かりやすい内容でお届けしています*


さて、最近、多くのユーザーが利用しているクラウドサービスにストレージサービスがあります。ここでは、クラウドストレージサービスとクラウドバックアップサービスについて比較してみたいと思います。


AppleのiCloudとは?

初めに、個人向けのサービスであるiCloudを取り上げてみたいと思います。iCloudにはさまざまな機能があります。具体的には、

  • メモや予定を同期する
  • iCloudバックアップと復元
  • なくしたiPhoneを探す
  • 写真を共有する(アルバム)
  • 「iCloud Drive」でPC上のファイルを管理
  • LINEのトーク履歴を「iCloud Drive」にバックアップ
  • iCloudフォトライブラリ
  • キーチェーン



図1:iOSでのiCloud設定画面
図1:iOSでのiCloud設定画面



たしかに「バックアップ」という言葉もあります。まずは、写真の共有やフォトライブラリの機能を見ていきたいと思います。写真の共有ですが、指定した写真や動画を特定のメンバーと共有可能になります。公開Webサイトを有効にすることで、URLを通知すれば不特定多数のユーザーに公開できます。
フォトライブラリでは、iOSデバイスに保存されている写真とビデオをすべてクラウドにアップロードし、どのデバイスからもアクセス可能になります。iOSデバイスがクラッシュしても、写真をなくす心配がありません。
共有とバックアップの2つの機能を有しているようにも見えます。しかし、対象となるデータは、写真や動画に限られます。もちろん、写真は個人にとって大切なデータになります。しかし、ビジネス文書などは、共有やバックアップの対象になっていません。この点は、一般的なバックアップとは大きく異なる点です。
また、共有に関しても、ファミリーでの共有が原則です。


図2:ファミリー共有
図2:ファミリー共有



もちろん、ファミリーと偽って利用することは不可能ではありません。しかし、ファミリーという条件を付けることで、不誠実な行動はとらないという前提を置いているともいえます(結果、一定のセキュリティを維持していると考えます)。つまり、外部の人間や取引先といったユーザーとの共有を行うのは、好ましいこととはいえないでしょう。
そして、iCloudバックアップと復元ですが、対象となるのは、以下のデータです。

  • Appデータ
  • Apple Watchのバックアップ
  • 通話履歴
  • デバイスの設定
  • HomeKitの構成
  • ホーム画面とAppの配置
  • iMessage、SMS、MMSメッセージ
  • iOSデバイスの写真と動画
  • Appleサービスからの購入履歴
  • 着信音
  • Visual Voicemailのパスワード



いってしまえば、iPhoneを買い替えたときに、各種設定やインストール済みのAppなどを復元できる機能です。したがって、PCのようにビジネスデータなどのバックアップ・復元を意識したものとはいえないでしょう。
先にあげたiCloudの機能の多くは、複数のiOSデバイスでデータや情報を共有するためのものといってもいいでしょう。逆にいえば、他のユーザーとのデータ共有はそれほど意識されていません。
PCなどとデータを共有するには、iCloud Driveがありますが、他のユーザーとの共有はできないのが現状です。


図3:iCloud Drive
図3:iCloud Drive



ここでは、AppleのiCloudを見てきました。ほかにもストレージサービスが提供されていますが、機能的にはそれほど変わりません。たしかに、IDとパスワードで外部との共有フォルダの設定が可能なサービスもあります。しかし、以下の点に注意をすべきでしょう。

  • 共有はできなくもないが、安全性に問題があり
  • あくまでも1人のユーザーが複数のデバイスでデータや設定を共有する仕組み
  • バックアップ機能もすべてのデータが対象ではなく、制限がある



もっとも重要なことは、個人(共有したとしても家族レベル)での使用を前提としている点です。したがって、ビジネスで個人向けのストレージサービスを使うことは、決して好ましいこととはいえないでしょう。また、個人レベルで、自分のHDDのデータをクラウドストレージで同期することが可能なサービスもあります。これは、1回目でふれたように、データの冗長性を高めることにはなります。ただし、あくまでもミラーリングであり、バックアップではありません。その違いは、バックアップは定期的にとっていれば、過去の任意の時点の状態に戻すことができます。しかし、ミラーリングは過去の状態には戻すことはできません(ストレージサービスによっては、復元機能を提供するものもありますが、期間や容量などの制限があります)。

法人向けのストレージサービスは?

一方、ストレージサービスでは、法人向けのサービスも提供しています。どのようなものか、見てみたいと思います。まずは、Microsoftが提供するOneDriveです。


図4:OneDriveの法人向けサービス
図4:OneDriveの法人向けサービス



次は、Dropboxの法人向けのサービスです。


図5:Dropboxの法人向けサービス
図5:Dropboxの法人向けサービス



個人向けと比較すると、多くの機能が追加されています。特徴をあげると以下のようになります。

  • 基本的に有料で、ストレージの容量もかなり大容量
  • 管理ツールやログ機能
  • 個人やグループといった多層な共有アクセス設定
  • セキュリティ対策



ほかにもサービスによって差はありますが、会社などでも安全に使えるように管理機能が追加されている点が、個人向けと大きく異なる点です。話を簡単にするために、端的な利用事例を紹介したいと思います。
まずは、共同作業のプラットフォームとしてのストレージサービスです。


図6:共同作業のプラットフォーム
図6:共同作業のプラットフォーム



ストレージサービスにアップロードされたファイルを複数のユーザーで共同管理する形態になります。このサービスでは、世代管理や排他的機能が重要な機能になります。たとえば、

  • Aさんがファイル1を修正
  • Bさんがファイル1を修正
  • Cさんがファイル1を修正



といった作業を行ったとします。このとき、Aさん、Bさん、Cさんのそれぞれが行った修正を残す必要があります。つまり、Aさんが行った修正の前の状態、Bさんが修正を行った前の状態、…をそれぞれファイルとして保存します。これが、世代管理になります。複数のユーザーで作業を行う場合には、必須の機能となります。
また、AさんとBさんが同時に修正を行ったらどうなるでしょうか。矛盾が発生しかねません。そこで、誰かが修正作業を行っているあいだは、他の人はそのファイルを修正できないようにします。これが排他的機能です。
データの共有だけでなく、共有アプリケーションや統合された業務アプリケーションも同時に提供されることがあります(以前、解説したSaaSというサービスになります)。クラウド上で提供されるアプリで、共通の操作を行うことが可能になります。いずれにしても、バックアップではなく、あくまでもデータの共有がメインになります。


もう1つのパターンは、自身の使うローカルPCとクラウドストレージでデータを同期します。さらに、クラウド上に保存されたデータを特定のユーザーに閲覧・ダウンロード可能にし、情報共有を行うというものです。


図7:ローカルと同期、さらに共有
図7:ローカルと同期、さらに共有



ローカルPCのデータをストレージサービスにアップロードします。アップロードされたデータは、正しく管理された別のユーザーによって、閲覧やダウンロードが可能になります。最近では、ローカルのHDDに保存するデータは最小限にし、ほとんどのデータをストレージサービスで管理するケースも増えてきています。
ストレージサービスにデータをアップロードすることで、複数のデバイスから、遠隔地からもアクセスできるようになります。また、安全にデータ共有も可能になります。
一般的には、同期フォルダを作成し、ユーザーみずからがクラウドにアップロードするデータを選択し、操作しなければなりません。つまり、ユーザーがアップロードし忘れるということが発生します。バックアップでは、どのファイルやフォルダをバックアップするのか、どのタイミングで行うかといったことを細かく設定することができます。つまり、アップロード忘れといったことは発生しません。そこが、バックアップとクラウドストレージの大きな違いといってもいいでしょう。


ストレージサービスに共通しているのは、仕事の効率化や生産性の向上を目標としている点です。従来のデスクワークやメールに頼った情報共有では、時間がかかってしまったり、認識に差が出てしまいます。そこで、クラウドのストレージサービスでは、より速やかに情報が共有できるように、さまざまな工夫が導入されています。ここでも、バックアップとは目指す目標が大きく異なっているといえます(バックアップの目標は、データの保護が最優先です)。
最後に覚えてほしいのは、


ストレージサービスは、バックアップではない


ということです。最近、ストレージサービスをバックアップ代わりに利用する人も少なくありません。しかし、目的も目指すところも大きくことなります。
では、バックアップシステムのAOSBOXでは、どんなことができ、従来のバックアップと何が違うのでしょうか。次回は、そのあたりをお伝えしたいと思います。

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